リスクの実績主義と絶対主義

投稿日時 2009-1-29 20:40:00 | トピック: 視点

ニューヨークのハドソン川に緊急着水を行ったUSエアウェイズのエアバスA320型機。

ラガーディア空港を離陸直後に鳥の群れが衝突。2機あるエンジンの両方がほぼ同時に停止したことが墜落につながったと見られている。

今回、飛行時間1万9000時間以上というベテランパイロットの経験と力量が多くの人命を救ったわけだが、通常、航空機は飛行中にジェットエンジンのタービンブレードが部分的に破壊されても墜落を起こす可能は少なく、また、海水面に不時着しても1時間は水面に浮かぶよう設計されている。
こうした航空機の安全設計への信頼が、不測な事態でもパイロットが冷静に対処できた要因であったかもしれない。

2007年7月、経済産業省は次世代ロボット※1の安全性確保のガイドラインをまとめた。

今のところ、次世代ロボットが市場にほとんど出回っていないため、次世代ロボットの安全設計の基本はJISなどの安全設計に準じており、新しい商品が生まれたらその都度安全性を個別にチェックするという考え方。

しかし、次世代ロボットの技術的要因から生じるリスクについてはあらかじめ定めておく必要があることから、現在、安全関連部の構成部品の故障率、単位時間あたりの平均危険率などのデータを基にしたリスクの発生確率の基準づくりが日本ロボット工業会などで進められている。※2

「ヒヤリハットが度々報告されている。又は災害の経験がある」高いリスク(1/10000以上・10のマイナス4乗)から、「日常ではミスはほとんど起こりにくい」低いリスク(1/1000000未満・10のマイナス6乗)まで、危険事象の発生確率を4段階に分けて検討している。

機械分野では、事故発生確率の最低リスクを1/10000000000000未満(10のマイナス13乗)にすべきという考え方もあるそうだが、理論計算上それをどう証明するか説明できないため、一般的には1/100000000未満(10のマイナス8乗)が一番低い数字とされ、鉄道では1/100000(10のマイナス5乗)に設定されている。

ちなみに航空機は、前年度の「10万飛行時間あたりの死亡事故件数」と「輸送実績1億人キロあたりの死亡乗客数」で次年度の安全設計目標を決める「実績主義」となっており、絶対的な安全設計=絶対主義ではないとのこと。
(つづく)

※1 次世代ロボットとは軍事、医療、極限空間、産業用ロボットを除く、サービスロボット全般のこと(人と協調する産業用ロボットは含まれる)

※ロボットビジネス推進協議会 安全対策検討部会 (部会長 池田博康・労働安全衛生総合研究所)



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