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投稿者 | スレッド |
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admin | 投稿日時: 2010-11-13 20:48 更新日時: 2010-11-15 15:43 |
管理人 ![]() ![]() 登録日: 2005-11-24 居住地: 投稿数: 105 |
![]() 毎年この時期に行われているロボットビジネス推進協議会の「次世代ロボットビジネスフォーラム」。
東京ビッグサイトの会場には、多くのロボット関係者が参加した。 はじめに、セラピー用ロボット・パロについて、開発者の柴田崇徳氏(産業技術総合研究所)が基調講演を行った。 『パロは、現在世界30ヶ国で約1700体が販売されている。 パロの生産は富山県で行っているが、富山県は伝統産業の集積があり、モノづくりの精神が息づいている。パロの毛並みは人の手で整えているため、顔の形が1体1体微妙に違う。 パロと接することで精神的な安らぎを得ることができるが、それはこころの豊かさを提供するということ。 歴史や文化に根ざしたところで生産し、こころの豊かさという主観的な価値をもつことは付加価値につながり、安易な価格競争に落ち入ることを回避できる。 パロはヨーロッパのCEマーク、アメリカのFDA、UL(※)の認証を受けている。 デンマークでは100ヶ所以上の高齢者施設で活用されている。セラピストにパロの利用方法やメンテナンスの仕方等を講習するパロの免許制度を導入し、既に受講者は200名を超えた。 また、定期的にユーザ会議を開催して、意見交換を行うと共にデータの収集も行っている。 アメリカでは軍関係の高齢者向け施設などで活用されている。 今後は、福祉先進国であるデンマークと最先端の福祉機器(ロボット)のある日本が組むことで、互いの強みを生かして、他のヨーロッパ諸国に水平展開していきたい。現在、オランダの福祉施設でパロの導入を進めている。 日本においては、パロを社会システム(介護制度)の中に入れ込んでいきたい』 ※CEマーク:商品がすべてのEU加盟国の基準を満たすものに付けられるマーク。 FDA(米国食品医薬品局): 食品、医薬品、医療機器、玩具などについて、その許可や違反品の取締りを専門的に行う。 UL(アメリカ保険業者安全試験所):製品の機能や安全性に関する標準化を目的とした製品安全規格や評価方法を設定し、評価試験を実施。試験に合格したものはUL認証マークの使用が認められる。 続いて、ソフトウェアプラットフォームのRTミドルウェアを適用した事例として、 「ヒューマノイドロボットHRP-4 」(産業総合技術研究所)、「イチゴ収穫ロボット」(前川製作所)の発表がなされた。 その後、富士重工業の青山元氏が清掃ロボットにおける「RTミドルウェアの利用事例」について発表した。 『現在、当社の清掃ロボットは六本木ヒルズなど住友商事が管理している15の大型ビルの共用部(エレベータホール、廊下など)に導入されると共に、住友商事のビルでは専用部(オフィスエリア)の清掃に活用されている。 また、ツムラの全工場で連結式の搬送ロボットが稼働している他、土壌消毒作業を自動で行う農業用ロボットや高速道路のサービスエリア ・パーキングエリアの休憩施設を自動で清掃するサービスエリア清掃ロボット、自動車運搬船用の清掃ロボットの実用化を進めている。 清掃ロボットにはRTミドルウェアを使用し、走行プログラム自動生成システムを開発。その教育プログラムをユーザに提供(有償)して、検定書を発行(ロボット運用サポートシステム)。ユーザがいつでもユーザ自身でプログラムを変更できるようにしている。ユーザはビル管理者なので、彼らが中小の清掃業者に教育、指導できる仕組みにしている。 ロボットビジネスを成功させるポイントは、ユーザ担当者を味方にしてユーザとの共同開発に持ち込むこと。これまで清掃ロボットで「賞」をいただいているが、当社単独での受賞は一度もない。 RTミドルウェアを活用するには、ソフトウェアを単に作っただけでは不十分で、「統合化」としっかりした「管理体制」が必要だ。 制御ソフトの開発は「複数人で長編の推理小説を書く」ようなもので、思考の視覚化と統制が欠かせない。 機械は設計と製造が別だが、ソフトウェアは設計と製造を同じ人間が行うことが多く、極めて属人的な作業になる。そのため、統制の下に目を光らせ、見張る必要がある。 当社では文書も図面の内の一つとして、すべて見える形にしており、2人の管理者が最低3回はチェックし、ソフトウェアのバグが出ないようにしている。 当然、若手からの反発はあるが、「管理職は恨まれてナンボ」と割り切り、当たり前のことを当たり前に行う「高度な平凡性」を大切にしている』 最後に、「ロボット事業化への取組み」についてパナソニックの北野幸彦氏が発表した。 『当社は、ロボット技術が今後の社会的課題を乗り越える重要な一手段と考え、試行錯誤をしながら、サービスロボットの商品化・事業化に取り組んでいる。 特に「医療福祉」「生活快適」「作業・労働支援」の3分野で2015年度に1,000億円の売り上げ、医療福祉で300億円を目指しているが、現在の売り上げは20億円ほどである。 過去には様々なロボットを開発してきたが、事業には至らなかった。そこで利用者のニーズ調査を行い、ニーズに基づいたサービスロボットも開発したが、利用者のニーズイコール実用的な商品ではないことが解った。 そこで人々のライフスタイルの変化を商品に活かせるよう納得できるビジョンをトップと現場が共有することにした(ビジョン共有)。 ロボットとは、「ウォンツを満たす機械システム」という認識のもと、現在、システムソリューションをワンストップで提供する「病院丸ごとロボット化」を進めている。 特に、薬剤業務支援に向けたソリューション展開に注力しており、「薬剤の払出」「調剤」「監査確認」「混注作業」「搬送」の各プロセスを支援するロボットシステムの開発を行い、「薬剤の払出」をする「注射薬払出ロボットシステム」や、払い出された錠剤の計数確認を自動で行う「錠剤鑑査支援ロボット」を実用化し、自律的に薬剤搬送を行う「HOSPI(ホスピー)」と組み合わせて、薬剤業務支援ソリューションとして提案している。 また、当社は石油ファンヒーターの事故を起こしてしまった経験から、「事故を起こさない」という強い執念で安全性の確保に取り組んでいる』 国際ロボット展の非開催年におこなわれたロボットビジネス推進協議会のフォーラム。 RTミドルウェア「OpenRTM-aist」の公開記念的な意味合いも込めての開催のためか、会場には多くのロボット関係者が参加していたが、ユーザとなるべき非ロボット関係者の姿が少ないという印象を受けた。 「ロボットビジネスの推進」を掲げている以上、それに適したユーザ層へのより積極的なアプローチが必要なのではないか。 (小林賢一 ロボットメディア) |